土佐豊永万葉植物園
はじめに
土佐豊永万葉植物園が開園したのは、門田秀峰氏が1974年に大豊町に帰省の際、 定福寺周辺に数十種の万葉植物の自生を発見したことがきっかけでした。当時の定福寺住職釣井義光師に話をし快諾を得て、 1975年4月20日に全国で6番目の万葉植物園として定福寺の敷地内に開園いたしました。 1975年の開園に先立ち、「土佐豊永万葉植物研究会」を発足しました。初代会長秋山信吉氏と会員は研鑽を重ね、 1976年には中内力知事や高知大学学長山岡亮一氏、高知県華道連会長有沢梅窓氏などを顧問に迎え活動を行い発展いたしました。 1979年に新たに「土佐豊永万葉植物保存会」を発足し、再出発をいたしました。
当時門田氏によれば、豊永万葉植物園は自生の万葉植物が3分の2を占め、自然を生かした植物園となっていると記されています。 更に「粟生山定福寺の1200年以上の歴史的重みのあるたたずまい、参道左側の大銀杏、鐘楼前の大樹の椋の木、相対する鐘楼横の大老杉、 また大平に向かうカーブ地点にある樹齢1千年を閲するかと驚愕される椎の古木、且つ又、本堂の奥山に点をも摩する榧の大木、 これを囲繞する喬木、灌木、このかぐわしい緑、調和されたムード。或る若き詩人が『緑の静寂』だという、言い得てまことに至妙、 この言葉を肌で受け止めて欲しいと思います。『緑の静寂』、この表現は、鐘楼のほとりにたたずみて、霊峰梶ケ森の遠景を仰ぎ、西川、 川平の緑の中に点在する家並、静けさに挟まれた地域、その山合いを縫う豊永川の清流を鳥瞰して、そうした借景の中において生まれた言葉だと思いますが、 何と言っても当園『緑の静寂』のシンボルは1200年以前に創建にかかわる定福寺の歴史の重み、本堂裏手の一人静の群生、名は姿を表す譬、静かに生きつぐ植物、右側の「寂静」の表現と言われる、 さざれ石の厳となりて、苔のむすまで、と讃えられる苔の数かず、茲に結集され、象徴されていると存じます。御観覧のよすがにと申し添えます」と記されています。
植物は自然環境や気候に影響を受け、植生も変化します。27年前、11月のお寺の行事の準備のために、屋外で水を触る作業はとても寒く、 手が痛いと言うと祖母は、お湯を足して洗ったほうがいいよと言ってくれました。現在その作業は半袖で作務衣を捲り上げ行っています。 温暖化により植物も変化いたしました。昔は生息していなかった動植物が生息し、土佐豊永万葉植物園発足当時の植物は移動したり、 また観れなくなったものもあります。境内には万葉歌碑が建立され、その周辺には歌碑に歌われる植物が生息していますが、 それも変化いたしますので地図上で示す難しさがあります。あらためて土佐豊永万葉植物園を散策できますようにと日々、整備をいたしております。 定福寺敷地内に植生する植物をご覧いただき楽しんで頂ければ幸いです。
土佐豊永万葉植物園の植物
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植物一覧
万葉集での花の呼び名 | 日本名 | 分類 | 開花季節 | 開花時期 |
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はぎ | ヤマハギ | マメ科 | 夏、秋 | 8月~10月 |
くれない | ベニバナ | キク科 | 春、夏 | 5月~7月 |
しろつつじ | 春 | 4月~5月 | ||
このてがしは | コノテガシワ | ヒノキ科 | 春 | 3月~4月 |
うのはな | ウノハナ・ウツギ | ユキノシタ科 | 春 | 5月~6月 |
むぎ | オオムギ | イネ科 | 春 | 4月~5月 |
あは | アワ | イネ科 | 夏 | 8月~9月 |
きみ | キビ | イネ科 | 冬、春 | 11月~3月 |
うも | サトイモ | サトイモ科 | 夏 | 8月~9月 収穫11月頃 |
ゆづるは | ユヅリハ | トウダイクサ科 | 夏 | 初夏 |
あかね | アカネ | アカネ科 | 冬、春 | 1月~4月 |
なつめ | ナツメ | クロウメモドキ科 | 春 | 5月~6月 |
ももよぐさ | キクタニギク(アワコガネギク) | キク科 | 春、夏、秋 | 5月~11月 |
たく | カジノキ | クワ科 | 春 | 5月~6月 |
いわいづら | スベリヒユ | スベリヒユ科 | 春、夏、秋 | 5月~11月 |
ひえ | ノヒエ | イネ科 | 春 | 6月頃 |
くそかづら | ヘクソカヅラ | アカネ科 | 夏 | 7月~9月 |
さくら | ヤマザクラ、バラ | 春 | 3月下旬~4月上旬 | |
つきぐさ | ツユグサ (アオバナ、ボウシバナ、カマッカ) |
ツユグサ科 | 夏 | 6月〜9月 |
ひる | ノビル | ユリ科 | 春 | 5月〜6月 |
くず | クズ | マメ科 | 夏 | 8月〜9月 |
かほばな | ヒルガオ | ヒルガオ科 | 春、夏 | 5月〜8月 |
さわあららき | サワヒヨドリ | キク科 | 夏 | 8〜9月 |
をばな | ススキ(かや) | イネ科 | 秋,花穂 | |
いちし | イチイガシ | ブナ科 | 春 | 5月頃 |
つた | テイカカヅラ | キョウチクトウ科 | 初夏 | |
たで | ヤナギタデ | タデ科 | ||
おみのき | モミ | マツ科 | 春 | 5月 |
あをな | カブ | アブラナ科 | 春 | |
うり | マクワウリ | ウリ科 | 夏 | |
よもぎ | カズザキヨモギ (ヨモギ、モチグサ) |
キク科 | 夏、秋 | |
はまゆう | ハマユウ(ハマオモト) | ヒガンバナ科 | 夏 | |
しりくさ | サンカクイ(サギノシリサシ) | 夏、秋頃 | ||
さふじゅ(双樹) | ナツツバキ(シャラノキ) (沙羅双樹と勘違い) |
夏 | ||
あべたちばな | クネンボ | ミカン科 | 初夏 | |
やなぎ | シダレヤナギ | ヤナギ科 | 早春 | |
ふじ | フジ | マメ科 | 春 | 5月頃 |
ふじばかま | フジバカマ | キク科 | 夏 | 8月〜9月 |
まゆみ | マユミ | ニシキギ科 | 初夏 | |
からあい | ケイトウ | ヒユ科 | 夏・秋 | |
もも | モモ | バラ科 | 春 | 4月初め |
あさ | アサ | クワ科 | 夏 | |
綿 | わた | アオイ科 | 秋 | |
あやめぐさ | アヤメ | アヤメ科 | 初夏 | |
はちす | はす | スイレン科 | 夏 | |
ひ | ヒノキ | ヒノキ科 | 春 | 4月頃 |
あさがほ | キキョウ | キキョウ科 | 夏 | 8月、9月 |
つげ | ツゲ | ツゲ科 | 春 | |
しきみ | シキミ | モクレン科 | 春 | 4月 |
なぎ | コナギ | ミズアオイ科 | 夏、秋 | |
せり | セリ | セリ科 | 夏 | |
いね | イネ | イネ科 | 夏 | |
はじ | ヤマハゼ | ウルシ科 | 夏 | |
うはぎ | ヨメナ(ハギナ) | キク科 | 秋 | |
わすれぐさ | ヤブカンゾウ(ワスレグサ) | ワスレグサ科(ススキノ科) | 夏 | 8月頃 |
かきつばた | カキツバタ | アヤメ科 | 初夏 | |
はねず | ニワウメ | バラ科 | 春 | |
なでしこ | ナデシコ | ナデシコ科 | 夏、秋 | |
おおいぐさ | フトイ (オオイ、トウイ、マルスゲ) |
カヤツリグサ科 | 夏、秋 | |
うめ | ウメ | バラ科 | 早春 | |
あふひ | フュアオイ | アオイ科 | 春、夏、秋 | |
おもひぐさ | ナンバンギセル | ハマウツボ科 | 秋 | |
まつ | クロマツ | マツ科 | 春 | 4月 |
さくら | ヤマザクラ | バラ科 | 春 | 4月初め |
ゆり | ヤマユリ | ユリ科 | 夏 | |
つつじ | ヤマツツジ | ツツジ科 | 初夏 | |
ごとう | アオギリ | アオギリ科 | 夏 | |
やまぶき | ヤマブキ | バラ科 | 晩春、初夏 | |
やますげ | ジャノヒゲ(リュウノヒゲ) | ユリ科 | 初夏 | |
わらび | ワラビ | コバノイシカグマカ科 | 夏 | |
にこぐさ | ハコネシダ (ハコネソウ、イチョウシノブ) |
イノモトソウ科 | ||
しだぐさ | ノキシノブ(ヤツメラン) | ウラボシ科 | 夏 | |
ほほかしわ | ホオノキ (ホオガシワノキ、ホオガシワ) |
モクレン科 | 春 | 5月頃 |
かたかご | カタクリ | ユリ科 | 早春 | |
ちち | イヌビワ (イタブ、イタビ、コイチジク) |
クワ科 | ||
ひめゆり | ヒメユリ | ユリ科 | 夏 | |
すぎ | ヒノキ科 | 早春 | ||
たちばな | ニッポンタチバナ(タチバナ) | ミカン科 | 春 | 6月頃 |
からたち | カラタチ(キコク) | ミカン科 | 夏 | |
ひかげ | ヒカゲノカズラ | ヒカゲノカズラ科 | ||
こけ | コケ | セン類 | ||
ぬばたま | ヒオウギ | アヤメ科 | 夏 | |
おみなへし | オミナエシ | オミナエシ科 | 晩夏、秋 | |
すみれ | スミレ | スミレ科 | 夏 | |
ちさ | チシャ (レタス、サラダナ、チサ) |
キク科 | 夏 | |
うけら | オケラ | キク科 | 秋 | |
くは | クワ | クワ科 | 春 | 4月 |
たまばはき | コウヤボウキ | キク科 | 秋 | |
やまたづ | ニワトコ | スイカズラ科 | 春 | |
ささ | クマザサ | イネ科 | 稀に開花 | |
つぎね | ヒトリシズカ(ヨシノシズカ) | センリョウ科 | 早春 | |
あづさ | キササゲ | ノウゼンカズラ科 | 夏 | 7月頃 |
かしは | カシワ | ブナ科 | 春 | 5月頃 |
しらかし | シラカシ(クロガシ) | ブナ科 | 春 | 4月 |
らん | ||||
つばき | ヤブツバキ | ツバキ科 | 夏 | |
しひ | シイ (ツブラジイ、イタジイ) |
ブナ科 | 春 | 6月頃 |
たけ | マダケ(ニガタケ) | タケ科 | 夏 | |
かし | アカガシ | ブナ科 | 春 | 5月 |
いちい | イチイガシ | ブナ科 | 春 | 5月頃 |
くり | クリ | ブナ科 | 春 | 6月 |
すもも | スモモ | バラ科 | 春 | |
さきくさ | ミツマタ | ジンチョウゲ科 | 早春 | |
かはやぎ | ネコヤナギ (エノコロヤナギ、カワヤナギ(同名異種あり)) |
ヤナギ科 | 早春 | |
まき | ヒノキ | 春 | 4月 | |
さねかづら | サネカズラ | マツブサ科 | 夏 | |
さかき | サカキ | ツバキ科 | 夏 | |
みつながしは | オオタニワタリ (タニワタリ、ミツナガシワ |
チャセンシダ科 | ||
やまぢさ | イワタバコ | イワタバコ科 | 夏 | |
かへるで | タカオカエデ (モミジ、イロハカエデ、イロハモミジ) |
ムクロジ科 | 春 | |
すげ | カサスゲ (ミノスゲ、古名 スゲ) |
カヤツリグサ科 | 春 | 5月〜6月 |
あしび | アセビ(アセボ) | ツツジ科 | 早春 | |
あぢさい | アジサイ | アジサイ科 | 夏 | |
ひさぎ | アカメガシワ(ゴサイバ) | トウダイグサ科 | 夏 | |
なし | ナシ(アリノミ) | バラ科 | 晩春頃 | |
なら | コナラ | ブナ科 | 春 | 5月 |
はり | ハンノキ | カバノキ科 | 早春 | |
かづのき | ヌルデ(フシノキ) | ウルシ科 | 夏 | |
つき | ケヤキ(ツキノキ) | ニレ科 | 春 | |
かつら | カツラ(オカヅラ) | カツラ科 | 夏 | |
つるばみ | クヌギ | ブナ科 | 春 | 5月頃 |
え | エノキ | ニレ科 | 春 | |
ねぶのき | ネムノキ | マメ科 | 夏 | |
和名 | 学名 | 分類 | 開花季節 | 開花時期 |
門田秀峰
大豊町大平に1903年門田繁穂(元村長)の四男として生まれる。兵役後、長兄門田豊實と同じ大阪府で警察官なる。 退職後万葉植物の研究に情熱を注ぎ、関西万葉植物研究会副会長となり、多くの植物学者と交わることとなった。 1974年、大豊町に帰省の際、定福寺に自生の万葉植物を発見し、万葉植物園を作る許可を釣井義光住職から得て、整備に着手しました。 関西地区を東奔西走し、130余種を収集し表示板を立て、土佐豊永万葉植物園を開園した。
会員募集
土佐豊永万葉植物園では、1975年の開園に先立ち、「土佐豊永万葉植物研究会」を発足しました。 初代会長秋山信吉氏と会員は研鑽を重ね、1976年には中内力知事や高知大学学長山岡亮一氏、 高知県華道連会長有沢梅窓氏などを顧問に迎え活動を行い発展いたしました。1979年に新たに「土佐豊永万葉植物保存会」を発足し、 再出発をいたしました。現在では、会員と共に植物の研鑽をおこない、また植物園の手入れを一緒に行っています。 常時、会員は募集いたしております。
会費:1,000円/年
事務局:高知県長岡郡大豊町粟生158 定福寺内
会長:畑山正親
参考文献
- 田村泰秀
- 2018 『万葉二千三百碑』.宮田敏子補.万葉の大和路を歩く会.147-151.
- 牧野富太郎
- 2017 『新分類 牧野日本植物図鑑』.編者邑田仁・米倉浩司.北隆館.
- 増田和夫 監修
- 2006 『薬になる植物図鑑』.柏書房.
- 三浦於菟
- 2011 『実践漢薬学』.東洋学術出版.
- 和久博隆
- 1979 『仏教植物辞典』.国書刊行会
- 讃岐屋一蔵の古典翻訳ブログ
- https://sanukiya.exblog.jp/28349570/
- ウィキソース
- https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%86%E3%82%B4%E3%83%AA:%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86