
万葉集での花の呼び名 | ひる |
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日本名 | ノビル |
題詞 | 詠酢醤蒜鯛水ク歌 |
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訓読 | 醤酢に蒜搗きかてて鯛願ふ我れにな見えそ水葱の羹 長意吉麻呂 16巻3829 |
原文 | 醤酢尓 蒜都伎合而 鯛願 吾尓勿所見 水ク乃煮物 |
仮名 | ひしほすに ひるつきかてて たひねがふ われになみえそ なぎのあつもの |
左注 | なし |
校異 | なし |
事項 | 雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 植物 動物 |
歌意味 | 醤に酢を加え蒜をつきまぜてあえものを作り、鯛が欲しいと望んでいる私に見せてくるなよ、まずい水葱の吸物を。 |
解説 | 歌材になりにくいものを即座に詠みこんだ歌で、宴会の料理に不満をこめたものでしょうか。これによって当時の食事と料理の一端を知ることができます。「醤」は大豆とこうじで作ったもろみのような調味料。「水葱」は葉を食用とする安価な野菜で、当時広く栽培することを奨励されており、美食の鯛とは正反対な粗末なものです。「ひる」は、今日、ノビルと呼んでいるもので古代にも春先の重要な野草菜であったようです。[矢富巌夫 1996:149] |
分類 | :ユリ科 |
開花時期 | :5月〜6月 |
全国の山野または堤の上などに生える多年生草本であるがはなはだ強い上に鱗茎が分かれて猛烈に繁殖する雑草でもある。草全体ニラの匂いがする。日本名は野に生えるヒルの意味である。ヒルはネギ、ニンニク等の総称で、その語源はかめばひりひりと口を刺戟するのでいう。[新分類牧野日本植物図鑑 2017:278]
薬草
7月頃に鱗茎を掘り採り、外皮とひげ根を取り除き、よく水洗いして用いる。薤白(がいはく)は天日で乾燥したものを中国での呼び名
<成分>含硫化合物<薬効>滋養強壮・食欲不振・虫刺され・皮膚病・腫れもの<使用方法>滋養強壮、食欲不振には。乾燥させた鱗茎1日3~5gを600㏄の水で30分ほど煎じ、3回に分けて服用。また1日数個生で食す。虫刺されや皮膚病には、患部をよく洗い蒸しタオルで温め、すり潰した鱗茎の汁を患部に塗る。腫れものには、全草をくろやきにしてすり潰し、粉末をごま油で練って患部に塗布する。生食は4~5月に採取するとよい[増田和夫 2006:31]