万葉集での花の呼び名 | さかき |
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日本名 | サカキ |
題詞 | 大伴坂上郎女祭神歌一首[并短歌] |
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訓読 | ひさかたの 天の原より 生れ来る 神の命 奥山の 賢木の枝に しらか付け 木綿取り付けて 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 竹玉を 繁に貫き垂れ 獣じもの 膝折り伏して たわや女の 襲取り懸け かくだにも 我れは祈ひなむ 君に逢はじかも
作者 坂上郎女3巻379 |
原文 | 久堅之 天原従 生来 神之命 奥山乃 賢木之枝尓 白香付 木綿取付而 齋戸乎 忌穿居 竹玉乎 繁尓貫垂 十六自物 膝折伏 手弱女之 押日取懸 如此谷裳 吾者<祈>奈牟 君尓不相可聞 |
仮名 | ひさかたの あまのはらより あれきたる かみのみこと おくやまの さかきのえだに しらかつけ ゆふとりつけて いはひへを いはひほりすゑ たかたまを しじにぬきたれ ししじもの ひざをりふして たわやめの おすひとりかけ かくだにも あれはこひなむ きみにあはじかも |
左注 | なし |
校異 | 歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 / 折 -> 祈 [紀] |
事項 | 雑歌 作者:坂上郎女 奈良 神祭 枕詞 恋情 地名 |
歌意味 | 高天の原の昔から 生まれ継がれた神々よ 山の奥から伐り出した 榊の枝に木綿(ゆう)つけて土に穴掘りお供えの 聖なる甕(かめ)を据(す)えつけて 竹玉いっぱい緒に垂らし 鹿のようにひざまづき 神事の衣装身にまとい これほどまでに祈っても 私は愛しいあの人に まだまだ逢えないのでしょうか |
解説 | 神を供祭(まつ)る主婦の行為を表すとともに亡夫への思慕をこめている歌です。「しらか」は祭祀用の純白の幣帛の一種。「木綿」は楮の繊維を白くさらした幣帛。「栄え木」として榊や樒が用いられたことから常緑樹の総称と考えられています。[矢富巌夫 1996:80] 枕詞:ひさかたの、しらか付く、「大伴坂上郎女」おおとものさかのうえのいらつめ。大伴宿祢安麻呂の娘、旅人の異母妹、母は石川郎女。穂積皇子に愛され、藤原麻呂の、次に大伴宿奈麻呂の妻となる。「木綿」楮(こうぞ)の皮の繊維で作った糸。幣帛(へいはく)として榊などにかける。「斎瓮」神に供える酒を入れる器。「竹玉」細い竹を輪切りにして緒に通した小玉。「たわやめ」しなやかな女性。「おすひ」上代の神事の衣服。 |